教習所で技能教習や学科教習を日々行っている教習指導員。
車の知識があってかっこいいというイメージと、「きつそう」や「辛そう」などの感想を抱いている人は多いのではないでしょうか。
身近なようで実態が良くわからない、そんな教習指導員の仕事がきつい理由を紹介していきましょう。
教習所の現役教習指導員が辛い、きついと感じる場面TOP5
自動車教習所は運転初心者にさまざまな乗り物の乗り方やルールを教える場所ということもあり、責任の重い仕事です。
自動車は人の生活を豊かに便利に変えてくれますが、同時に使い方を誤れば凶器にもなります。
だからこそ、そんな自動車の乗り方を教える教習指導員の責任は大きいとも言えますよね。
そういったプレッシャーや、多くの人に運転技能やルールを教える指導業であるが故の苦労などが特徴的です。
ここでは、私を含め教習指導員の仲間がよく「辛いなぁ」「きついなぁ」と感じる場面をランキング形式でまとめてみました。
【1位】教習指導員の資格の勉強や実技の練習が大変なこと
第1位は、「資格勉強や実技練習」に関することです。
教習指導員になるためには指導員審査(※)と呼ばれる試験を受けなければなりません。
指導員審査に晴れて合格すると、指定自動車教習所で教習指導員として働くための知識や技能を認められたことになります。
なお、この試験を受けるにあたり、「事前教養」と言われる勉強もしなければなりません。

引用元:勝英自動車学校
教習所指導員の資格試験を受験するには、教習所に所属し、事前教養を最低2~3ヶ月程度受ける必要があります。
その後、公安委員会が実施する3週間ほどの新任教習指導員養成講習を受けなければなりません。
また、受験する車種の運転免許証を持っていなければならないため、免許を持っていない人は運転免許の取得から始める必要があります。
指導員になるまで、講習や受講しなければならない項目が多く、半年~1年の間は自動車学校で働きながら勉強も頑張らなければならないため、その点が大変といえば大変。

実際に私も資格取得のために、とにかく勉強や実技の練習に時間を費やした思い出があり、時々「あの時はしんどかったなぁ」と思い出すことがあります(笑)
>>【併せて読みたい】教習所指導員になるための資格の取り方や流れ
とはいえ、裏を返せば資格を取るまである程度頑張れば、プロの教習指導員として手に職を付けて安定的に働くことができるため、「環境を変えて頑張る」という心構えがあれば大丈夫ですよ^^
【参考】未経験~プロの教習指導員を目指す「指導員候補生」のインタビュー

【2位】様々なタイプの教習生に教えること
教習所に来る教習生の年齢層は10代後半~60代まで幅広く、また、中には海外出身の方もいます。
そして、性格や学習能力は人それぞれ…
そんな多種多様な生徒を見極め、指導していくことが大変という声も教習指導員の中にはあったりします^^;
多様な人を円滑に指導していくためのコミュニケーション能力が求められるため、コツをつかんで慣れるまでは確かに大変だなと思う時もあります。
中には、教習に対しての意欲があまり感じられない生徒もいますし、教習所によっては、ちょっと注意したらクレームをつけたり反抗的な態度を取ってしまう生徒もいます。
どうしても教習指導員は公安委員会から「生徒の安全面を考慮し、厳しく指導すること」が求められているため、時には厳しい言い方をしなければならないこともあるのです。
そういった「厳しく指導しなければならない」という原理原則に従って指導した結果、クレームにつながることもあるので、理不尽な思いをすることもあるでしょう。

とはいえ、きちんと謙虚かつ意欲的に取り組んでくれる生徒がほとんどではありますので、1部の問題のある生徒さんから付けられるクレームをいちいち意に介さないことも重要です!
【3位】繁忙期の労働時間が長いこと
教習指導員という仕事の忙しさは繁忙期と閑散期に左右されます。
夏休み期間や春休み期間は繁忙期と呼ばれ、この繁忙期には残業などが増えることも多いです。
定時は各自動車学校ごとに設定されていますが、その後に教習が入ってしまう場合もあり、その分が残業として扱われていきます。
あくまで一例にすぎませんが、繁忙期の教習指導員の一日の流れは以下のようなイメージです。
9:30〜 | 出勤〜車の整備、洗車、準備 |
10:15〜 | 朝礼 |
10:30〜 | 教習 |
14:30〜 | お昼 |
15:30〜 | 教習 |
20:40〜 | 教習後〜チームの終礼 |
21:10〜 | 退社 |
これを見てみると、9時30分出社、21時10分退社となっており、勤務時間が12時間近くあるため、長いと感じる人も多いでしょう。
さらに、上記業務に加え、教習所によっては社内報の作成や営業業務のサポートも行う場合もあったりします。
そうは言うものの、近年は厚労省の指導により長時間の残業は着実に減ってきており、また、警察庁や都道府県公安委員会の指導により、業務効率化のため無駄な作業は極力減らすような流れになっていますので、営業時間の中では基本的に教習の指導に集中することができます。
また、実際の教習の間は50分教習、10分休憩という流れになっているため、休憩時間はしっかり確保できますよ^^

近年の働き方改革の流れは自動車学校でも例外なく浸透してきており、昔はきつい職場だった教習所も、健全な労働環境に変わりつつあります。
【4位】指導していた生徒が検定で不合格になってしまった時
運転免許試験に生徒が落ちてしまった時、指導していた指導員も残念に感じてしまうケースもあるでしょう。
自分が一生懸命教えた生徒が不合格となり、落ち込んでしまっている様子を見ると少々ヘコみます>_<
自分の指導方法が悪かったのか?と考え込んでしまう人も。。
仮免許試験の段階では合格だったとしても本免許試験で不合格となる可能性もあるため、指導員はそういった責任も持って仕事に取り組む必要があります。

引用元:日本資格取得支援
日本の免許合格率は上のグラフの通りになります。
合格率は大体おしなべて75%くらいですので、不合格者が出たとしても落ち込み過ぎないことが大切です。
私も落ち込んだことが多々ありますが、一生懸命教えたからといってすべての人が合格するという訳ではありませんし、最後はやはり生徒一人ひとりがきちんと勉強したかどうかに左右されます。
徐々に年数や経験を積むにつれて慣れてはきますが、最初はあまり考え込みすぎないことも大事ですよ!
【5位】教習指導員の仕事の責任の重さ
運転免許は多くの人が取得していますが、免許を取った卒業生にはその後の安全運転や無事故・無違反が求められるため、その指導を行うという事には責任が生じます。
自動車事故は次の表の通り、2004年以降件数が年々少なくなってきているとは言え、近年でも毎年30万件以上の事故が起こり、完全にゼロになることはないでしょう。
教習生がしっかりと運転知識を身につけ、正しい運転技術を学ぶためには、先述の通りでもありますが、ときには厳しい指導も必要。
教習指導員の適切な指導によって、生徒のドライバーとしての健全な知識、運転能力、心構えが培われるのです。

自動車学校卒業後の生徒が幸せに、安全なカーライフを送るためには免許取得時の教習指導員の正しい指導が重要になってきます!
教習所の教習指導員にはならではの、やりがいも多い!

さて、ここまでは教習指導員が感じがちな「つらいことやきついこと」の上位5位を挙げてきましたが、もちろん辛いことばかりではありません!
教習指導員はやりがいも大きい仕事です。
やりがい1:運転や指導ができる車種が増え、キャリアや給与を上げていける
教習指導員として指導できる車種は普通自動車だけではありません。
車の運転免許には、、
- 大型免許
- 中型免許
- 準中型免許
- 普通免許
- 大型特殊免許
- 大型二輪免許
- 普通二輪免許
- 小型自動二輪免許
- 小型特殊免許
- 原付免許
など、様々な種類があるように、これらの車種ごとに指導員としての免許も存在しています。
普通車だけではなく、様々な車種の指導員資格を地道に取得していくことで、仕事の幅がどんどん増えていく…
そう、スキルアップ、キャリアアップ(≠給与やポジションアップ)の基準がはっきりとしている点も、教習指導員になるメリットでもあり、やりがいでもあります。

「資格」が問われない仕事では、個人の能力に対する会社の評価が曖昧になりがちです。
一方、教習指導員というのは資格を取れば取るだけ評価される、つまり、努力がきちんと報われるため、やりがいを健全に保つことができる仕事と言えるでしょう。
また、様々な車が運転できるということも、運転が好きな人に支持されるポイントでもあります(^^)
指導員免許や運転免許は全国で通用する一生モノの国家資格(しかも、希少性が高く、需要も高い)ですから、もちろん転職や復職の際にも役立ちますよ!
やりがい2:頑張った分だけ昇給・昇格できる
2022年現在、基本的に生徒の数に対して教習指導員の数が不足している教習所が非常に多いです。
つまり、需要に対して供給不足となっているため、多く教習をこなしていけば、他の多くの職業に就くよりも稼げるという利点もありますよ!
先述の通り、指導できる車種の指導員資格を取れば取るほど給与も上げていますし、指導員としての能力を証明できれば幹部候補になることだってできます。
やりがい:生徒からの感謝&社会貢献性の高さ
教習指導員は生徒と関わる時間が長いため、「ありがとうございました」と感謝の言葉を貰う機会が多いです。
運転技能の教習や学科の教習、入校の案内など、教習所での業務にはたくさん生徒と関わる時間がありますが、その中で技能が向上したり、わからないことが分かるようになった時、その他生徒が成長を感じた時に喜びを分かち合えるのがステキですよね(^^)
生徒さんが教習所卒業後に本免許を取り、その後合格の報告に来てくれる時なんかは本当に一生懸命指導して良かったなあと感じるものです…!
お客様からの「ありがとう」の言葉は次なる仕事への活力の根源です。
この言葉を貰えるだけで、自分の仕事が人の役に立っているという自信につながり、もっと頑張っていこうというエネルギーに変わっていきます。
また、教習指導員というのは社会全体で見れば地域社会の交通安全に大きく貢献している仕事といえます。
安全運転のできる運転者を育成し、事故のない社会を実現していくのが教習指導員の使命ですから、とても社会貢献度の高い仕事でもあります。

関わった人から感謝され、社会にも貢献する…
そんな仕事をしていれば自分自身のQOL(クオリティオブライフ)も向上しますよね!
教習指導員は社会的意義も大きく、やりがいのある仕事!
今回は、教習指導員のつらい点とやりがいの両面を解説しました!
指導員の仕事は大変な側面(特に資格取得をするまで)があるのは事実ですが、資格取得後の将来は非常に明るい仕事と言えます。
特に、
- 運転が好き
- ゼロからでも手に職を付けたい
- 安定して仕事をしていきたい
- 人と接するのが好き
- 社会貢献性の高い仕事をしたい
という方にとっては非常にやりがいのある仕事ですので、1部の「教習指導員はやめとけ」という意見は全く心配に値しません。
たとえ今は指導員資格を持っていなくても、教習所に入社してから指導員としての資格を取得できる点から、未経験~でも転職しやすい職業ですから、特にやりたい事がないという人も、検討してみてはいかがでしょうか?(^^)