教習指導員の資格取得難易度は?試験の合格率や資格要件を元に現役指導員が解説します。

教習指導員の資格
この記事を書いた人
小野尾 光平

2015年より千葉県の自動車学校「鷹ノ台ドライビングスクール」の取締役に就任し、教習指導員~経理、人事・労務、営業など教習所で行う業務を一貫して担当する。

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免許取得の際に、誰もがお世話になる教習指導員。

教え方が上手くて、面白くて、優しい教官にあたると嬉しいですよね。

そんなかつてお世話になった教官さん(教習指導員)に自分がなるのはどの程度の難易度なのか。

ここでは、現役教習指導員の私が教習指導員資格の実際の合格率や難易度を、自分の体験も交えて解説していきます。

教習指導員の資格ってどんな資格?

まず、指定自動車教習所指導員とは、都道府県公安委員会が道路交通法に基づいて指定を受けた自動車教習所において、教習指導および技能検定を行う人のことです。

指定自動車教習所指導員の資格には次のように2種類あります。

  • 教習指導員
  • 技能検定員

「教習指導員」は、講義をおこなったり助手席で指導をおこなう、いわゆる「教官」のことで、「技能検定員」は、卒業検定などで教習生の技術を評価する人のことです。

一般的に、どちらも取得する人が多いですが、ここでは、主に「教習指導員」の資格取得について取り上げていきます。

教習指導員は、各都道府県公安委員会の指定を受けた自動車教習所の指導員を認定する国家資格です。
そのため、一度受かれば、日本全国どこの教習所でも通用します。
逆に言えば、自動車教習所の指導員になろうと思ったら、必ず取らなければならない資格ということです。

資格取得要件

教習指導員は、21歳以上で、受験する車種の運転免許を持っていれば、特に運転経歴がなくても、受験することができます。

学歴の基準は設定されていないため、基本的には誰でも受験できますが、教習所の中には、高卒者や大卒者に限定して採用している場合もあります。
ただこの場合でも、学部や学科はあまり問われないため、学歴を気にせず挑戦しやすい資格であると言えるでしょう。

しかし、資格を取得するには、まず教習所に入社して、2~3ヶ月以上勤務しながら「事前教養」を受けなければなりません。
この「事前教養」は、1時限50分として90時限以上あり、教習所によっては2倍近くの教養を行う場合もあります。

また、その後に公安委員会が実施する「新任教習指導員養成講習」を56時限(3週間程度)受けなければならないことになっています。
それらを全て受講し終わって初めて、指導員審査が受けられるので、学歴不問ではあっても、資格要件は厳しく、勉強も相当に求められます。

また、二種免許の教習指導員審査を受験する場合は、二種免許の他に、同じ車種の一種教習指導員資格者証を所持している必要があります。
二種免許だけでは受けられないので、注意が必要です。

表1:事前教養の科目と時限数(例)

科目時限数
一般教養5
教習計画の概要4
教習指導員に必要な基礎知識40
効果測定など5
指導法などの実務教養16
運転実習・所内20
運転実習・路上
90

教習指導員の試験ってどんなもの?

教習指導員の試験は、年2~4回(各都道府県による)、数日間にわたって実施されます。
数日かかるのは審査内容が多いからで、審査は、筆記審査と技能審査と面接審査の3つに分かれます。

ここでは、指導員審査の細かい内容を解説していきます。

筆記審査

筆記審査では、次の6つの項目が出題されます。

  • 道路交通法
  • 教習所関係法令
  • 教育知識
  • 交通の規則・教則
  • 安全運転の知識
  • 自動車の構造等の科目

筆記審査では、これら6つの項目の全てに合格するのが必須です。

その時々、或いは自治体によって違いもありますが、内容は、概ね次のようになっています。

表2:筆記試験の内容

教則の内容となっている事項、その他自動車の運転に関する知識・交通の規則・教則:正誤式100問または論文式3問(60分)
・安全運転の知識:論文式2問以上(30分)
・自動車の構造等:論文式2問以上(30分)
・道路交通法:論文式2問以上(60分)
自動車教習所に関する法令についての知識・論文式2問以上または正誤式40~50問(30分)
教習指導員として必要な教育についての知識・論文式2問以上(30分)

ただし、不合格の科目があった場合でも、1年間は合格した科目が有効になるので、不合格の科目のみを次の審査で再チャレンジすることが可能です。

技能審査

技能審査では、次の3つの技能が問われます。

運転技能

運転技能の内容については、次の通りです。

表3:運転技能の内容

試験時間約15分
試験内容決められたコースをMT車で走り、運転の能力をみます。

走るコースについては、試験日の朝に発表され試験官が助手席に座り、試験を行います。

技能指導法

技能指導法の内容については、次の通りです。

表4:技能指導法の内容

試験時間約15分
試験内容実際に技能教習の一部を行います。

試験官が教習生役になり、発進と停止・坂道発進・後退・狭路の通行・交差点のどれかを実施します。
試験官が教習生のような初心者運転を再現し、わざとエンストをしたり、速度が速いまま左折したりするので、そのような運転に対して、原因の理由をみつけて指摘し、適切な是正を行っていくという試験です。

学科指導法

学科指導法の内容については、次の通りです。

表5:学科指導法の内容

試験時間約15分+約5分(面接)
試験内容実際に学科教習の一部を行います。

学科教本の中から一つ項目を選び、教習生役の試験官を相手に学科教習を行う試験です。
教習を行ったあと、約5分面接があります。

面接審査

面接審査は教習指導員の試験の一番の難関と言われています。
面接審査では、次のようなことを問われやすいので、あらかじめ回答を準備しておくのが良いでしょう。

教習指導員として必要な教育についての知識・普通自動車免許の視力・聴覚条件は?
・眼鏡等条件のある教習生が、技能教習時に眼鏡等を忘れたらどうするか?
・路上教習中に事故を起こした場合の対応はまずどうするか?
など
所属教習所・死亡事故などの情報・所属教習所が現在かかえている教習生数は何人?
・現在、○○県 (所属教習所を管轄する公安委員会の所在地である県) は交通死亡事故者数は全国で何位?
・交通死亡事故多発警報の発令条件は?
など
志望動機・自分について・教習指導員としてどうありたいか・自動車学校に就職した理由は?
・なぜ教習指導員になろうと考えたか?
・どのような教習指導員になりたいと思っているか?
・自分の運転は好きか?
など

これらの質問に自信を持って答えなければならないので、ある程度の想定問答集を作って、教習指導員審査を受ける仲間同士で模擬面接の練習を重ねた方が無難です。

そして、回答の最後には必ず「以上です」と付け加えることを忘れないようにしましょう。

教習指導員の試験の合格基準

指導員審査の合格基準は、それなりに高いものとなっています。
それは、初めて車に乗る教習生の命と安全を預かる責任があるからです。
また、運転が全く初めてという人に安全で正しい運転の仕方を教える責任も重大です。
したがって、審査の合格基準は、ほぼ満点を求められるといっても過言ではないでしょう。

筆記審査の合格基準

指導員審査の筆記審査の合格基準は次のようになっています。

表6:筆記審査の合格基準

教則の内容となっている事項その他自動車の運転に関する知識
(論文式択一式、補完式または正誤式の筆記)
論文式:85%以上
その他:95%以上
自動車教習所に関する法令についての知識
(論文式択一式、補完式または正誤式の筆記)
論文式:85%以上
その他:95%以上
教習指導員として必要な教育についての知識
(面接または論文)
80%以上

技能審査の合格基準

技能審査についても次のような合格基準となっています。

表7:技能審査の合格基準

教習指導員として必要な自動車の運転技能
(実技)
85%以上
技能教習に必要な教習の技能
(実技または面接)
80%以上
学科教習に必要な教習の技能
(実技または面接)
80%以上

面接審査の合格基準

面接審査の合格基準は、明らかにされていません。
ただ、教習の技能については、前述のとおり80%以上です。

教習指導員の試験の合格率

合格率は、非公開です。

そのため正確な数字はわかりませんが、だいたい60%程度と言われています。

ただ、筆記試験においては、いくつか不合格になっても、1年間は合格科目が有効なので、あと2回の試験で全科目合格すればいいことになり、それを踏まえると、もう少し高くなると思われます。

サイトによっては、「一発合格する人はほぼいない」と書いてあったりしますが、私の経験では、まじめにコツコツ勉強していれば受かる、ということは言えると思います。少なくとも私の周りでは、普段からまじめに勉強していて落ちた人はいません。

教習指導員の試験の難易度

筆記試験においては、運転免許を持っていることが前提なので、交通の規則・教則については、免許を取った時の教則本をしっかりマスターしていれば大丈夫です。
ただし、95%以上の正答率を求められるので、ほぼ丸暗記に近い状態になります。
また、法律に関しての試験もあり、これについてもほとんど暗記となりますので、記憶力に自信のない人にはつらいかもしれません。

技能試験においては、運転技能試験は、教習所で行った卒業検定で95点を取れるくらいの運転ができれば十分合格できます。
しかし、「教習に必要な技能」という科目では、試験官に対して疑似の運転指導を行ったりしますので、運転さえできれば受かるというものではありません。
「教官」としての技能もしっかり試されますので、事前教養でみっちり勉強しておく必要があります。

面接試験においては、主に「教官」としてふさわしいかどうかを見られます。「教習に必要な技能」も含め、教え方、言葉遣い、態度、仕草、人格などを見て、総合的に判断されます。
試験を受ける仲間同士で模擬面接を行ったりなど、事前にある程度想定問答集を参考にして、練習しておくといいでしょう。

基本的に、おそらく大学受験よりは難しいものではありません。
きちんと勉強していれば、合格できる難易度です。
受験資格が学歴不問というのが、そのいい証拠です。
ましてや、車が好きで、興味がある人にとっては、勉強自体はそれほど苦にはならないのではないでしょうか。

教習指導員の試験は厳しいけれど難しくはない!

ここまで、教習指導員資格の試験について細かく見てきました。
教習指導員審査は、資格要件も厳しいですし、何か月もかかる事前教養に加えて、審査の後には事後教養まで受けなければならず、確かに大変です。

指導員審査も、合格基準がとても高いので、相当に勉強しないとまず受かりません。
しかも教習所の職員として勤務しながら勉強するのですから、努力は強いられます。
ただ、難易度そのものはそんなに高くはないので、ふだんからまじめにコツコツ勉強してさえいれば、合格できるものです。

車が好きで、教習指導員になりたいという思いが強くて、まじめに勉強できる人であれば、きっと合格できると思いますし、いい指導員になれると思います。

もしできれば、先輩教習指導員に、いろいろ相談したり、訊いてみたりしてみてください。
苦労話とともに、勉強や試験のコツを教えてくれるかもしれません。

>>教習指導員になるまでの一連の流れはこちら

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